ファイナルラウンドは前日から降り続く雨に見舞われ、午前中の予選はウエットコンディションによるアタックになった。知っての通り、雨のレースはタイヤの勝負。その性能がレースを有利に運べるかを左右するといってもいい。しかしそれは承知だったが、47GTに装着したウエットタイヤは、当日の気温に対してコンパウンドが硬めという事実が予選中に発覚。思うようなグリップが得られず、シリーズチャンピオンを掛けた決勝を2番グリッドからスタートすることになった。
ポールポジションを獲得したのは、速さを着実に身に付けてきた藤沢選手がドライブするジネッタG12。そう、この時点でのポイントリーダーだった。我がチームの心境は、もちろん穏やかだったはずがない。確実に決勝レースを有利に進められる作戦を、この段階で練る必要があった。
決勝のスタート前には雨が上がり、路面はセミウエット状態。回復の兆しがあった天気を予測したライバル達は、全車がドライタイヤの装着準備にはいる。その作業を横目で見つつも、まだレースを有利に運べる作戦が決まらない。決勝のスタートまで、時間も残り僅かになっていた。
「よし! ギャンブルで行こう」、優勝を勝ち取るために出した答えがそれだった。雨は上がったものの、そう速く路面が乾くはずがないと予想を立て、ライバルがドライタイヤを装着する中ただ1台だけウエットタイヤで挑む作戦に出た。
そのギャンブルは意外に成功した。“意外”とあえて付けたのは、少し後悔もあってのこと。というのもレースの後半は完全なドライ路面に変わり、柔らかいウエットタイヤはグリップのタレが急速に進んでしまう結果となったからである。セミウエット路面だったスタート直後はトップに立ちリードを稼いだが、グリップの弱まった後半ではペースが落ち、ファイナルラップには2番手にかなり詰め寄られる展開だった。
ともあれ、結果は優勝。チャンピオンを獲得できた。ギャンブルによってレース序盤はウエットタイヤのグリップが活きて、2番手との差に貯金を持てたことが逃げ切りのゴールを許してくれた。
もっとも、ドライタイヤを装着していれば後半で詰め寄られることなく余裕を持ってゴールできただろう。最終戦の段階では、47GTの走り性能も充分に完成の域に達していた。15周のレースにおいてエンジンはパワー感を弱めることもなく、さらにその性能を有効に活かせるクロスミッションの仕上がりも文句がない。サスペンションにしても、攻めのドライビングを可能にできるコントロール性の良い仕上がりのため、他の追従を許さないのも当然のことだったといえる。
現代のスーパーレーシングを追求するといった当初のコンセプトが、確かに達成されていると言ってもいいだろう。