Chapter.22 |
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〜勝利の法則〜 初めて装着するF4用スリックタイヤは47GTの走りを安定させる武器となる |
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路面との唯一の接点、タイヤ。マシンが猛スピードでサーキットを走れるのも、タイヤが最終的に仕事を行なっているからこそ成し得る。コーナーリングもブレーキも、その性能の範囲だけでしか行えないことから、タイヤの役目は、速さに直結する重要な要素であることは誰もが承知のはず。
何を今さら…?
そう思うだろうが、マイスターカップの第2戦では、予選中にタイヤが放つ、いつもと違うグリップ感に、あらためてタイヤ性能の重要さを意識させられたからだ。装着されるタイヤがこれまでと違うことは聞かされていなかったが、予選のタイムアタックの間に示すグリップ性能は、いつもより明らかにハイレベルであり、コーナー限界が一段グレードアップしていた。とにかくハンドリングにはエッヂの立った鋭い切れ味が光っていて、フロントの旋回性能にシャープさが増加した具合。たとえば、ヘアピンコーナーでアンダーステアが現れるタイミングや、最終コーナーでリアが滑り出すポイントなど、あらゆるシーンで限界域が向上しているのは確かだった。
事実を耳にしたのは、予選の終了後。この日、47GTの足下に装着されるタイヤは、フォーミュラの入門クラス、F4(エフ・フォー)のコントロールタイヤであるアドバン製スリック。マイスターカップのプロクラスでは、全車がアドバン製のスリック装着がレギュレーションにより義務づけられ47GTもそれを履くが、例のF4用のスリックは入手経路が特別なため皆が選べるものではなく、我々としても使用の機会が得られたのは今回が初めて。ただ、入手可能としていたライバルは、すでにF4用スリックを愛用しているため、我々としては気になっていたタイヤでもある。そして今回その装着のチャンスを得たわけだが、正直なところ「このタイヤなら!」といった期待感が高まったことは明か。
その期待感とは、想像つくだろうが自己ベストの更新だ。F4用スリックのグリップ性能に頼れば、それが夢ではない予感がする。実際のところマイスターカップ第2選では、当日の初夏を思わせる暖かい気候の条件かであっても、56秒台突入が難しくない走りを予選で確認している。予選ではスローダウンしていた同クラスのマシンに、タイムアタック中に引っかかり57秒前半に止まったが、その大幅なロスがなければ確実に56秒後半の記録は残せたはず。それだけに最速のタイムアタックに相応しい、空気の冷えた最終戦の時期であれば、おそらく56秒8の自己ベストを更新できると、F4用スリックのポテンシャルに期待を高めた。
タイヤの話しが多くなってしまうが、F4用スリックは決勝での戦力アップにも効果をみせるだけに、もう少し説明をしておくことにしよう。そのメリットとは、タイヤの熱ダレ。これまで装着していたスリックを例にあげれば、新品状態から使用して、予選で3周、決勝で7ラップもすると著しい熱ダレすることが通常で、47GTとの相性が思わしくないのか、グリップダウンによりコーナーでは大幅にペースを落す必要があった。が、F4用スリックにおいては、その熱ダレによるグリップ変化が穏やかなのである。決勝レースの後半でペースダウンを余儀なくされていた47GTにとっては、まさに水を得た魚になりうるタイヤ性能ということである。
この第2戦の決勝レースでは、まさに熱ダレの少ないそのタイヤ性能はありがたかった。ポールポジション獲得の47GTではあったが、背後には近ごろ速さに磨きをかけたアート23Bが2番ポジションにつき、ペナルティで最後尾からスタートするアート7も猛追を狙うことから、タイヤによるペースダウンは命取りになりかねない状況だった。実際のところスタート直後は、47GTの背後にアート23Bがテール・ツー・ノーズ。57秒前半で走る47GTをぴったりマークして、スキあらば、いつでも勝負をかけてきそうな緊迫シーンが続いた。バックストレートから見える電光掲示板に視線を飛ばせば、その表示からアート7の猛追がはじまったことも明確。まさに57秒台ペースの維持が要求され、ペースダウンは絶対タブーな状況といってよかった。
しかし、今回の決勝はグリップに余裕があり心配もほどほどだった。決勝の後半に突入しても、47GTは57秒台をキープ。いつもであれば、著しくアンダーステア特性に変化してしまう1コーナーから第2ヘアピンまでのインフィールド区間も、このレースではハンドリングにシャープさが薄れることもなく軽快さを維持してくれたほど。最終コーナーの立ち上がりでは十分なトラクションも確保してくれるなど、F4用スリックは、さすがに程よい熱ダレはみせるものの47GTの走りを安定させる武器となっていた。
ただ、決勝後半に突入した時点では、幸いにしてタイヤ性能ウンヌンを気にする必要もない47GT圧勝のレース展開。最後尾スタートのアート7は追い上げ空しく47GTのバックミラーに映し出されることもなく、背後のスリップに入り込んでいたアート23Bとも、このころには大きなリードを稼ぎ出していた。いつものようにブッチギリでゴールを目指すのも良いが、今回はエンジン性能の温存など安全をみつつ途中はペースダウンも行うほど、余裕をみせつけた展開で、第2戦もポール・ツー・フィニッシュによる勝利をものにすることができた。
しかし、残念なことに47GTにとっては、相変わらず目標を見つけだせていない状態が続いている。今回のマイスターカップ第2戦も参加台数は10台を切る状況であり、以前の華々しいレースシーンが楽しめない現状だ。しかもプロクラスにおいては、期待していたライバルの復活もなく、エントラントは張り合いをなくしてしている。この状態で47GTを走らせるのは、果たして意味を持つのだろうか…、そんな目標を見いだせない2003年シリーズが経過しているのだ。そのため、我々としてはエントラント増加を待つか?
それともエントラント増加を積極的に図る上で、何か注目をあびる新計画を実行するか?悩まされている。おそらく、次の第3戦では何かしらの動きがあるだろう。
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