Chapter.1 |
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「偽り」との決別
(ヨーロッパとの出会いは、忘れられない思い出となった) |
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47GTのステアリングを握り現在レースに参加している僕にとって、忘れられない思い出深い1日がある。
それは忘れもしない95.9月23日。その日はオートジャンブル誌の取材のため筑波サーキットに招かれたわけだが、冷えた早朝の空気を切り裂く軽快なレーシングサウンドがパドック全体に響きわたり、ただならぬ雰囲気が漂っていた。その爆音の主は、テクニカルショップHAPPYが取材に同行させた1台のロータスヨーロッパである。
それが僕にとってヨーロッパとの初めての対面だったが、足元にはグリップ性能の頂点を極めるスリックタイヤの存在もあり、いかにも一筋縄では言うことを聞きそうにない印象を抱かされたことを今でも鮮明に覚えている。
初めて試乗するクルマに、正直言って、これほど緊張感を誘発されたことは今までにない。おそらくヨーロッパに対して当時は信頼性を持てなかったことも、いつにない緊張感を抱いたひとつの理由になっていたのだろう。一部のジャーナリストの言葉を借りれば、「シャシー性能が古くさい」の評価を耳にしたこともある。しかもこの日、パドックで対面したヨーロッパには、不安にさせる要素が増えていた。
冒頭でも少し触れたが、足元には現代のスポーツカーでも悲鳴を上げてしまうハイグリップタイヤが装着され、まして搭載されるエンジンは2リッタ−に拡大されオーバー190馬力を誇るロータスツインカム。しかしながらシャシー性能の重要な役目を果たすフレームはオリジナルのままというのに不安がある。確かにテクニカルショップHAPPYにより多少の補強が施され剛性アップが図られてはいるが、基本的に20年以上も前の設計のことを考えると、実のところ、ハンドリング面に関して期待は持てなかった。
ところが想像したそのハンドリングに、心配する必要は全くなかった。コースに飛び出したヨーロッパのシャシー性能には「古くさい」の印象は一切なく、それこそ現代のスポーツカーを食い物にできるといっても遜色ないポテンシャルを備えていた。オーバー190馬力を確実に路面へと伝えるタイヤ接地性が充分に発揮され、コーナーの立ち上がりでは強烈な加速状態を築き、ターンインでは鋭くクリッピングに入れ込んでいく旋回性能をも味わえたほどだ。
ましてコーナーをドリフトで駆け抜けることも難しくしない優れたコントロール性も確かめられるなど、その攻撃的なポテンシャルは、以前フォーミュラでレース参戦していた時代のドライビングフィールに近い。操作そのものはシビアだが、ダイレクトな挙動に慣れたときには、サーキットのバトル場面においても圧倒的な戦闘力になるようなハンドリングといっていい。滅多に味わうことの出来ないそのフィーリングに、比類なき魅力を感じ取ったことも事実だった。
年齢的にサーキットの狼を読んでいた世代ではないが、ヨーロッパに対するその表現は決して漫画だけの世界ではなかった。ましてドライバーを圧倒するその走りは決して過去のものではなく、現代にも通用するポテンシャルといえる。だからこそ、この日の思い出は強く記憶に焼き付いているのだろう。 |
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